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Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

そして、そこを飛鳥のように掠めたお蝶の影が、逸早く外の暗へ駆け出しました。

金右衛門は驚きを極めて、

「お蝶? 今のがお蝶か」

と、あまりの唐突にうろたえながら、そこの入口を出たりはいったりしていましたが、日本左衛門はそれに答えるまもなく、お蝶の出た裏の方へ飛びおりて、

「しまッた」

疾風をついて追いかけました。

それから間もないことです。

燈火を失った甘酒茶屋の真っ暗なところへ、スタスタと大股に飛んで来たのは、昼間、元気なくここへ立寄った高麗村の次郎で、明け放しになっている家の中へ首を突っこみながら、

「おばさん、寝たのかい。さっき預けたおいらの包を、返してくんないか。――おばさん、おばさんてば」

奥で物音がしていながら、さっぱり返辞がありませんので、何の気なしに土間の中へはいって行こうとすると、裏口から戻って来た金右衛門が見つけて、

「おや?」

と、その矮短な影を透かして見ました。

次郎もひょッと振顧りました。そして魁偉な浪人体にギョッとした心が、思わずも、杖についている例の胆刺の穂先を知らず知らず持ち上げて、自然のうちにおのれを護る形をとらせました。