Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
いままでは毎夜毎夜、心から気をゆるめて休んだこともありませんが、今夜は、久助という者が隣の部屋にいて、自分の身を守っていてくれるという安心がはっきり胸にあったので、お蝶の寝息も次第にグッスリと深まってまいりました。
かくて、短夜はまもなく白み初めたようです。カラカラと明け方の街道をとおる野菜車、どこか裏の方で、もう仕事をはじめたらしい機屋の筬のひびき、物売りの呼び声、井戸つるべの音。
陽はその家の東の窓に、朝からカンカンと照りつけています。たれか、用のあるらしい者が、一、二度その戸をたたいたりしましたが、ゆうべ夜ふかしをしたせいか、陽が三竿に至っても起きる気しきが見えません。
暫くすると、やっと、
「あ、暑い……」
と、お蝶が一番先に目をさましたらしい。
ゆうべ、ちょっと見かけたここのお内儀も久助も、まだグッスリと寝坊している様子です。羽目板がソックリ反るほど照りつけている外の陽に、家の中は蒸籠のように蒸されています。
勝手がわからないので、お蝶は、蚊帳のつり手を外しながら、
「久助さん」
と、隣へ声をかけてみる。
「まだお寝み? おそいようですよ、ああ暑い――」