Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
――馬春堂も伊兵衛もそう合点したものですから、目をそらしていると、いつのまにか熨斗幕のかげにたたずんだ者は、そこを立ち去ってしまいました。
で、また、思案と、なげ首。
「おらあズラかると肚をきめた」
やがて伊兵衛の口切りです。
「逃げるのか、この一座を」
と、馬春堂は残り惜しそうな顔色にみえる。
「それよりほかに思案はねえや。もともとお粂にくッついて来たのも、楽に旅をつづけようというこっちの方便、ここらで見切りをつけるとして、あとは雲にでも風にでも乗るとしようじゃねえか」
「お前が出るならしかたがない。じゃ、わしも行くとしよう。しばらくのんきに暮していたが、また元の旅易者になり下がるかな」
「べらぼうめ、筮竹なんか背負ってあるかなくっても、金と米ッ粒はおいらの足のふむところに付いて廻っているじゃねえか」
「でもないぜ。ずいぶんお前も飯の食いはぐれをやる性分だからな」
「そのかわりにゃ、今に夜光の短刀を手にいれてよ、南蛮船の加比丹に持ちこんでみねえ、すぐその日から何万両の長者様だ」
「また十八番が出た。おれは風邪をひきそうだ」
「ちぇッ、慾のねえお父つぁんだ」
「慾はあるが、おれの慾はじみちな慾さ」