Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
ヒューッと吹き煽る雪颶に、彼女は傘を取られそうになって、思わずそこに立ち竦む。
それも風の力とは思えません。あの時、血みどろにさせた三人、山屋敷の仲間が吹雪の中からおどり立って、肩や蛇の目を抑えて離さないような気がする。
彼女は目をつぶって駈け抜けました。そして切支丹屋敷の高塀へどんと打つかって、その傘も体も雪の中へ抛り出すように仆れてしまう。
「ああ、怖かった……」
前後を見廻して立ち上がると、彼女は、投げ出した、傘も下駄もそのまま、暫く塀を見上げておりましたが、やがてのこと、崖に寄った樹木の雪を落として、ヒラリと山屋敷の内へ飛び降ります。
雪明りの明るさに、お蝶が物蔭から物蔭へ小走りに忍んで行く姿は、餌をあさる雉子のように、ひらひらする袂の色や帯の色まで夜目に映る。
やがてその姿は、例の官庫の前に立ちました。帯の間から取り出した合鍵をもって、一心に其処を開けようとする様子。
そこを開ければ、彼女の心を満たすさまざまな物がある。官庫は彼女の打出の小槌であり、彼女の物慾を満たす殿堂です。お蝶は寒さも怖ろしさも忘れている。
けれど、官庫は開かない。