Japanische Klassiker mit Furigana
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かいじょうのみち
海上の道
柳田 国男
Lesen Sie 海上の道 (かいじょうのみち) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 182.344 Zeichen · 353 Bildschirme
そういう必要は今ちょうど、我々の庭さきまで来て立っているような感じがする。たった一つの私の記憶などは、何の役にも立たぬようなものだが、偶然にそれが七十何年かの間、幽かに持続することを得たばかりに、或いは日本の最も大きな問題の一つに、是から繋がって行くのではないかという、楽しい希望が抱かれるのである。夢であったら諸君に相すまぬが、まず能うかぎり簡略に述べておいてみよう。私の生まれ故郷は中部播磨、姫路から四里ほどの上流で、僅かな岡の南の緩傾斜面に、古く拓かれた農村であった。家の横手をお宮の方へ登って行く、上阪という細逕があって、それを隔てたすぐ西隣の田のへりに、この記念すべき植物が、毎年三、四株自生していたのである。後にその土地には登記所か何かが建って、あたりはまったく変ったからもう残ってはいまいが、たしか背後を少しの竹藪で囲われて、日当りのよい、しかも湿地であった。仲間がもう一人、幸いに長命しているから、或いは思い出してくれるかもしれない。とにかくに四つか五つの年から数年の間、毎年この実が熟すると必ず採りに行き、草履を泥だらけにして叱られたことも覚えている。