Japanische Klassiker mit Furigana
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かいじょうのみち
海上の道
柳田 国男
Lesen Sie 海上の道 (かいじょうのみち) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 182.344 Zeichen · 353 Bildschirme
七 稲の種子を携えて
七 稲の種子を携えて
稲の根元に関する言い伝えは、今は伝説とも言い難いくらいに、各地各時代の変化をしているが、なおその底に潜んで幽かなる南北の一致が認められる。まず日本の北部諸県にあっては、大昔、大師という人が天竺に渡って、一穂の稲を盗んできて、狐に頼んでこれを葦原の中に隠させた、という類の話が少しずつの変りをもって、弘く流布している。その時に狐を神に祀る約束をしたともいえば、或いは稲荷大明神がみずからその稲を取ってこられたとも語って、少しずつの合理化が試みられているが、ともかくもこの天竺は印度のことではなく、単に天上を意味する農村語であったことはほぼ明らかで、しかもそのダイシは女性であったとも、三十幾人かの子持ちであったとも伝えられて、少なくとも真言宗の始祖ではなく、今もこの国の東半分に、汎く守られ続けている霜月三夜、すなわち旧十一月二十三日からの稲祭、いわゆる大師講の名の起こりでもあった。
ところが一方に是と半分まで同じ話が、遠く西日本の各地に飛び飛びに行われている。自分らの聴き知る限りでは、隠して持ってきた穀物は稲ではなく、おくれてこの邦に流伝した大麦であった。