Japanische Klassiker mit Furigana
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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
Lesen Sie 猟奇の果 (りょうきのはて) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 134.971 Zeichen · 270 Bildschirme
現に、賊は裏門を這入らぬ内に、捕まってしまったじゃないか。ハハハハハハ、ナアニ、少しも心配することはないのだよ」
「でも、私、なんだか。……お父さま!」
雪江は、目でいつもの合図をした。十九歳の雪江は、今でも時々父に甘えて、その腕に抱かれる癖があった。この目使いはその合図なのだ。
常右衛門氏は、それを見ると、なぜか幽かに狼狽の色を現わした。そして、一向彼女の要求に応じる気色もない。
雪江は妙に思った。こんな際にあれを云い出したのが悪かったのかしらと考えたが、こんな際であればこそ、父の力強い腕に抱かれたかった。彼女は思切って、ツカツカと父の側に寄り、父のアームチェーアに、柔い肉体を無理にも押し込む様に腰かけた。麻の着物を通して、父のよく肥った肉体と、娘のすべっこい肌とが密着した。雪江は怖さに熱苦しいことなどを考えている余裕はなかったのだ。
常右衛門氏は娘の肌を感じると、不思議なことに、益々狼狽の色を示した。まるで、一度もそんな経験を持たなかったかの様に。
無邪気な箱入娘は、次には、彼女の青ざめた、併しふくよかな頬を、父の口の前へ持って行った。小さい時分、何かにおびえると、父は彼女の頬に接吻して力づけてくれた。