Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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すさのおのみこと

素戔嗚尊

芥川 竜之介

Lesen Sie 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.917 Zeichen · 86 Bildschirme

Aozora Bunko

九

が、たちまち今怒鳴りつけた事を思い出して、両腕を大きく開くや否や、猛然と悪戯な女たちの方へ、二足三足突進した。

彼等はしかしその瞬間に、素早く林の外へ逃げて行った。彼は茫然と立ち止ったなり、次第に遠くなる領巾の色を、見送るともなく見送った。それからあたりの草の上に、点々と優しくこぼれている嫁菜の花へ眼をやった。すると何故か薄笑いが、自然と唇に上って来た。彼はごろりとそこへ横になって、芽をふいた梢の向うにある、麗らかな春の空を眺めた。林の外ではかすかながら、まだ女たちの笑い声が聞えた。が、間もなくそれも消えて、後にはただ草木の栄を孕んだ、明るい沈黙があるばかりになった。……

何分か後、あの羽根を傷けた山鳩は、怯ず怯ずまたそこへ還って来た。その時もう草の上の彼は、静な寝息を洩らしていた。が、仰向いた彼の顔には、梢から落ちる日の光と一しょに、未だに微笑の影があった。鳩は嫁莱の花を踏みながら、そっと彼の近くへ来た。そうして彼の寝顔を覗くと、仔細らしく首を傾けた。あたかもその微笑の意味を考えようとでもするように。――

九

その日以来、彼の心の中には、あの快活な娘の姿が、時々鮮かに浮ぶようになった。