Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 114.139 Zeichen · 233 Bildschirme
「親分、出かけましょうか」
翌る日の朝、まだ飯も済まぬうちに飛んで来たのは、勢い込んだ八五郎でした。
「たいそう早いじゃないか」
「でも根岸から観音様に廻ると、昼近くなりますよ」
「そいつは正直すぎるだろう、御神籤所を見張っただけでたくさんだよ」
だが、このガラッ八の馬鹿正直さが、平次のために、いろいろのことを発見してくれるのでした。
観音様にたどり着いたのはちょうど巳刻(十時)頃、二人は絵馬を眺めたり、鳩に餌をやったり、ざっと半刻(一時間)ばかり待っていると――、
「親分、来ましたよ」
ガラッ八はそっと平次の袖を引きました。
見るとちょうど仁王門を入って来るのは、平次にも見覚えのあるお菊という可愛らしい下女。鳩にも五重の塔にも眼をくれず、真っ直ぐに段を登って、大賽銭箱の前に立つと、赤い紙入を出して、小銭を摘んでポイと投げ、鈴の緒に心持触れて、双掌を合せたまま、ひた拝みに拝み入るのでした。
「ちょいと、可愛らしいでしょう」
「黙っていろ」
鼻筋の通った、ふくよかな横顔をガラッ八は指します。
「親分」
「何だ、うるさいな」
「あれがまともでない人間で――」
振り返ると段の中ほどのところに立って、不精らしく懐ろ手をしたまま、凝と娘の様子を見ているのは、渡り中間らしい様子をした中年男です。