Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

Lesen Sie 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 114.139 Zeichen · 233 Bildschirme

Aozora Bunko

五

――私が家中を探したのは、遺言状を見付けたかったためでございます」

「…………」

「岡崎屋の身上は、土地も家作も貸金も、世間で考えた倍もある上、現金だけでも三千両はございます。支配人の私がそんなものを探すわけがあるでしょうか」

半九郎は昂然として頭を挙げるのです。

「なるほどそう聴けば立派なことだ。が、遺言状は?」

「困ったことに、ありませんよ。やっぱり若旦那は運がなかったんですね。たった一と言許すと書いた遺言状がなければ、御親類方の手前、若旦那を跡取りに立てることもなりません」

五

娘のお琴は、病身らしい弱そうな体と、それにもまして弱い心の持主でした。十七というにしては智恵も遅く、何を訊いても埒があかず、ただ今朝は自分で雛段を畳んで雛の道具を土蔵へ運ぶはずだったが、気分が悪かったので止してしまって、下女のお文に頼んだところ、お万が手伝ってくれてとんだことになったということを、おろおろした調子で話すだけです。

「ところでお嬢さん、若旦那が潮来から帰らなきゃ、岡崎屋の血続きの者というとお前さんたった一人だ。――この家に住んで淋しいようなことはありませんか」

薄暗い家の中の空気と、一と癖あり気な奉公人たちの中にたった一人取残されたようなお琴の存在は、他から見ても何となく淋しくたよりないものだったのです。