Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 114.139 Zeichen · 233 Bildschirme
「なるほど」
「あ、娘は御神籤を引いていますよ」
「しッ」
下女のお菊は御神籤を引くと、別段それを見るでもなく、八つに畳んで、もう一つ中ほどから折って帯のあいだへすべり込ませました。
そこから御堂を出て、石畳を渡って仁王門を出るまで、娘の取済ました顔は、一度も四方を見ません。段の中途からそれを見詰めていた人相のよからぬ男も、平凡な日程を繰り返すような静かさで、どこともなく姿を消してしまいました。いや、どうかしたら、物蔭からそっと眼を光らしているかもわかりませんが、境内にはざっと見渡したところ、怪しい人影もなかったのです。
お菊は粂の平内様の堂の前に立つと、これも事務的な冷静さで、帯のあいだから先刻の御神籤を取出し、堂の格子へ器用な手付でざっと結びました。
「四方を見ようともしない。――おそろしい胆の据わった娘じゃないか」
銭形平次がそう言った時、お菊はもう平内様の堂を離れて、伝法院の横の方へ、美しい鳥のように姿を隠すのでした。
そのときどこからともなく現れた先刻の怪しい男、お菊の跡を見え隠れにつけて行く様子ですが、お菊はそれを知っているのか知らないのか、相変らず振り向いて見ようともしません。