Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
ひょっとして父の痩せた顔を見て、いきなり日頃の行状を告白したくなったり、また母親から貰って便所で泣いたりしていると帰りが遅くなるやろと思った。当もなく京極を歩いて、誰か知った顔に会えへんやろかと眼をきょろつかせた。この前一銭の金を借りるために、京極を空しく三往復したことを想い出したりした。その時十四銭もっていたのだが、腹は空っているし、珈琲ものみたかった。結局「スター」の喫茶店で十五銭のホットケーキを食べれば、珈琲がついているから、一挙両得だと思ったのであるが、それには一銭足りない、誰か知った奴に会わないかと歩きまわったのである。「スター」の前を六度通ったが、そのたびに、陳列窓のなかにあるホットケーキの見本が眼にちらついてならなかった。三条の「リプトン」で十銭の珈琲を飲むか、うどんをたべるかどっちかにしようと自分に言い聴かせたが、どうにもホットケーキに未練が残った。ふわっと温いホットケーキの一切が口にはいる時のあの感触が唾気を催すほど、想い出されるのだ。蜜のついている奴や、バタのついている奴や、いろいろ口に入れたあとで、にがい珈琲をのんだら、どない良えやろかと、もう我慢出来なかった。