Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

それで辛うじてその板の間の部屋が事務所らしい体裁を備えていた。三和土のうしろに格子戸があり、台所が隙間から見えた。板の間から一段あがって、奥の座敷があるらしかった。

案内を請うと、奥からでっぷり肥えた四十位の女が出て来た。片一方の眼がぎらぎら光って、じっと横の方を凝視していた。義眼らしかった。葉書を見せると、板の間の椅子へ坐らせて、女は押入の戸をあけて、そこについている二階への階段をばたばたと上って行った。かと思うと直ぐ降りて来て、

「どうぞお二階へお上りやしとくれやす」と言った。スリッパを脱ごうとすると、

「どうぞそのままで。だいじおへんどっせ」京都訛で言った。二階へ上ると、窓側の机の前にあぐらをかいて、浴衣掛けのまま、ペンを走らせていた男が振り向いて、ガラスペンを耳の横へ挟むと、

「さあ、こっちへ来とくなはれ」と畳の上に置いてある籐椅子をすすめた。小柄な上にひどく痩せて、顔色のわるい、六十近い貧弱な男だった。口髭を生やしているために、一層貧相に見えた。浴衣をはだけた胸は皺だらけで、静脈が目立っていた。

「僕が社長です」そう言って、籐椅子へちょこんと坐り、きょときょとした眼で豹一を見た。