Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

前方には光が眩しく流れていて、戎橋筋だった。その光の流れはこちらへも向うの横丁へも流れて行かず、筧を流れる水がそのまま氷結してしまったようだった。それが豹一の心に眩しかった。

その光の中に、詳しく言えば、小間物屋の飾窓に立って、飾窓を覗いていた女が、ふと振り向いて、豹一の顔を見た途端、

「あッ」思わず同時に、声が出た。か、どうかは咄嗟のことであとから考えてみても記憶はなかったが、豹一はいきなり突っ立ったまま、暫く動けなかった。紀代子だった。薄暗いところから出て来た豹一には、紀代子が明るい光のなかにいるせいか、思い掛けず美しく見えた。それが豹一の頭に、

(俺はいま失業者だ)と不意に想い出させた。そのため、豹一は一層狼狽してしまった。貸席のある横丁からのこのこ出て来たということも、咄嗟のうちに頭にあった。

紀代子は直ぐ視線を外らし、飾窓の前を離れて歩き出した。それで、彼女に連れがあることがはじめて分った。彼女は実に簡単に素知らぬ顔をつくっていた。

(亭主だな)豹一は途端に察した。どんな顔をしているか、見てやろうかと、覗いてみたが、極めて平凡な顔だったので、印象がはっきりしなかった。