Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

ふと、顔が赧くなるような、乱暴なことを思いついた。が、さすがに実行出来なかった。それどころか、物を言おうとすると、体が固くなって来た。

(こんなことでは駄目だぞ! よし、百数えるうちに、この女の手をいきなり掴むのだぞ)そう言い聴かせた。握るといわずに、掴むというところが、豹一らしい。

「ねえ? あんた、お家どこなの?」

豹一は返事をしなかった。一つ二つと数え出していたからである。

(五つ、六つ……十、十五、……二十、……)

いきなり煙草の銀紙をまるめた玉が飛んで来て、豹一の肩に当った。

(二十七、二十八、……どいつだ? 二十九、三十、……)

豹一はじろりと部屋の中を見廻した。若い男と視線が合った。咄嗟ににらみかえして、豹一は、

(あいつ、この女に気があるらしいな)と、思った。その男もじっと眼を据えて、にらみかえしていた。女は素早く二人の容子に気がついて、

「およしよ。あの人、不良よ」豹一の耳の傍で言った。

不良と聴いて、豹一の眼は一層凄みを帯びた。余りににらみ過ぎて、泪が出そうになったので、あわてて、眼をこすって、またにらみかえした。

(よし、あの男の眼の前で、この女の手を掴んでやる! それから、あの男に飛び掛って行くんだ! おっと、数えるのを忘れていた。