Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

ここを追い出されたっておれは水商売仲間ではつぶしがきく男や。それに、あの女をおれのものにしたら、あの女でおれは食って行けるのやないか)そう思うと、もう佐古の足は自然に動き出して、多鶴子のいる客席の方へ歩き出した。「いらっしゃいませ」

佐古はまず客の方へ挨拶して置いてから、揉手の手をほどき、多鶴子の肩をとんと敲いて、「ちょっと」柱のかげへ呼んだ。

「……? ……」固い表情で多鶴子は寄って来た。強い香水の匂が佐古の鼻の穴の毛をふるわせた。すっかり興奮してしまった佐古はわれを忘れて、ぐっと多鶴子の体へもたれかかるようにしながら、多鶴子が擽ったくて我慢が出来ぬほど耳近く口を寄せて、

「あんたに注意してかんならんことがあるのや。気になってたのや。あのな、おやじを警戒しなはれや。あんたのため思ていうたげてんねんやさかい、よう心得ときなさい」

「ありがとう」多鶴子はひらりと身をひるがえして、元の席へ戻った。

多鶴子には、佐古が言った「おやじ」とは誰のことか咄嗟にわからなかった。が、わかろうともしなかった。警戒すべきは「おやじ」だけではない。どの男だってそうだ。昨夜一晩でうんざりするほど経験させられたのだ。