Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
矢野に愛情がなかったと、思うと、多鶴子ははじめて自分が矢野を愛していたのだと、はっきりわかるような気がした。人気のためではない好いているからだった、――と、豹一に言った言葉もこの時の多鶴子の気持から押せば、満更弁解でもなかったわけだ。その証拠に、多鶴子はもう矢野のことを思い切らねばならぬと、思ったではないか。その瞬間の豹一は、どう見ても矢野よりも影が薄かった筈だ。と、同時にどんな醜男であるとしても、いくらかましに見えた筈だ。今夜「オリンピア」へ来てくれと、多鶴子がいったのも無理からぬことだった。
なお、序でにいうならば、多鶴子に「オリンピア」へ行く決心をさせたのも矢野の後姿だった。女は失恋したときは、けっしてひとりきりにならないものだ。たとえ、心の苦しみを忘れるために旅行するにしても、誰かにその旨言ってからするのが普通である。
ともかく、多鶴子は「オリンピア」へいつもの時間に現れた。佐古は多鶴子の顔を見ても、昨夜のことは全然知らぬ顔をするつもりだったが、多鶴子が現れると、
「おや、いらっしゃい」と、思わず言ってしまった。まるで、意外な人を迎えるような言葉だった。