Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
一般的見解に従ったまでだが、しかし澄み切った両の眼は冷たく輝いて、近眼であるのにわざと眼鏡を掛けないだけの美しさはあった。そんな事を咄嗟の間に考えていると、紀代子は足早に傍を通り過ぎようとした。豹一は瞬間さっと蒼ざめた。話し掛ける言葉がなぜか出て来ない口惜しさだった。
(この一瞬のために二時間を失うてはならない)
この数学的な思い付きでやっと弾みつけられて、いきなり帽子を取って、
「卒爾ながら伺いますが、あなたは水原紀代子さんですか」
月並でない、勿体振った言い方をと二時間も考えていた末の言葉だったから、紀代子も一寸呆れた。しかし、紀代子にしてみれば、こんな事はたびたびあることだ。大して赧くもならずに、
「はあ」そして、どうせ手紙を渡すならどうぞ早くという眼付きで、豹一を見た。そんな事務的な表情で来られたので、豹一はすっかり狼狽してしまい、考えていた次の言葉を忘れてしまった。いきなり逃げ出して、われながら不様だった。
不良中学生にしてはなんと内気なと、紀代子は嗤って、振り向きもしなかったが、彼の美貌だけは一寸心に止っていた。(誰それさんならミルクホールへ連れて行って三つ五銭の回転焼を御馳走したくなるような少年やわ)ニキビだらけのクラスメートの顔をちらと想い泛べた。