Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
五
「…………」
なにを言ってるのか、豹一にはききとれなかった。涙がいっぱいの気持だった。なまなましい多鶴子の肢態の記憶が豹一の胸をしめつけていた。痛いような嫉妬が、多鶴子の白い胸のホクロひとつにまで哀惜を覚える心とごっちゃになって、豹一は身動きもせず、じっとスクリーンを見つめていた。
だんだんたまらなくなってきた。
写真のなかの多鶴子はピストルを握って、男に迫った。
「こりゃ。良きじゃね」
土門が豹一に囁くために、ふと横を向くと、いつのまにか豹一の姿が見えなくなっていた。
五
小屋を出るとすっかり夜だった。盛り場の灯がチリチリと冷たく、輝いていた。
豹一は薄暗い電車通に添うて、谷町九丁目の方へ帰って行った。
下寺町の坂下まで来ると、急にぱっと明るくなった。停留所の前のカフェのネオンが点滅しているのだった。
うなだれていた顔をあげて、ふとその方を見ると、真っ白に白粉をつけて、カフェの入口に立っている女の視線と打っ突かった。
「お兄さん。おはいりやすな」女は眼のまわりに皺をつくって、笑った。その笑いがネオンの色に、赤く染まり青く染った。
豹一はあわてて視線をそらし、寒々とした気持で坂を登りかけたが、だしぬけに、