Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
出ると、赤井は、
「金を貸してくれ」と言った。ポケットから五円紙幣を掴み出して渡すと、
「君も一緒に行かんか」
「いやだ!」自分も驚くほど大きな声で答えた。赤井の行くところは大体分っていた。たぶん宮川町の遊廓だろう。いやだと答えたのは本能的なものだった。先刻の席で胸苦しくなって、吐くために芸者に案内されて洗面所へ行った時にだしぬけに経験された、唇をなめくじが這うような、焼いた蜜柑の袋をくわえるような、薄気味わるい感触が、ぞっとするいやさで想い出されるのだ。
赤井は、
「じゃあ、行って来るよ。僕を軽蔑するなよ」そう言って身をひるがえすと、川添いの暗闇のなかへ吸い込まれて行った。
豹一は円山公園から知恩院の前へ抜けて、平安神社の方へ暗い坂道を降りて行った。そして岡崎の公園堂の横から聖護院へ出て、神楽坂を登って秀英塾へ帰った。大学の時計台が十時を指していた。義務を果したという安心でホッとすると疲労が来て、直ぐ床を敷いてもぐり込んだ。塾生はちゃんと就眠時間を守っていた。が、塾長の中田は暗闇のなかで目を光らせていて、豹一の口から吐出される「醜悪な臭」をかいだ。中田は無論豹一が掟を破ったことに就て、大阪の塾主へ報告すべきであると思った。