Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
可哀そうなものだな。
(二)
おなじ里、漆間の翁の宿。舞台にあらわれたる家の中はすべて土間にて、奥の間には古き簾を垂れたり。上のかたに大いなる土竈ありて、消えかかりたる藁の火とろとろと燃ゆ。土間には坐るべき荒むしろと、腰をかくべき切株などあり。ほかに鋤鍬の農具あり。打ちかけたる藁屑など散乱す。下のかたには丸太を柱ととしたる竹門あり。門の外には大樹あり。樹の間がくれにかの蓮池遠くみゆ。
(白髪の翁と嫗は竈のまえに語る。)
嫗 どうも困ったことが出来したが、お前さんはまあどうするつもりだね。
翁 どうするといって、これも因果とあきらめるよりほかはあるまい。
嫗 あきらめられるお前さんはしあわせだ。わたしにはどうしてもあきらめられない、十七のとしまで大事に育てた、かけがえの無いひとり娘を、おそろしい蛇の人身御供にするのを黙ってあきらめていられるお前さんは、ほんとうに羨ましい。
翁 ええ、もう泣いてくれるな。おれだって人間だものを……。可愛い娘が蛇にみこまれたと思えば、おそろしいやら悲しいやらで、涙が胸一杯にせき上げて来るのを、歯をくいしばってじっと我慢しているのだ。