Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
しかも迂濶にそれを主人の耳に入れるのは良くないというので、小ざかしい侍女二人と侍三人とをひそかに手分けして、東西南北それぞれの方角へ捜索に出した。それらの者どもが思い思いに出て行ったあとで、桃井播磨守の屋敷まで使いに行った本庄采女という若侍が帰って来た。彼は姫が家出の噂を聞くと、誰にも告げないですぐにその行くえをさがしに出た。
采女はことし十九で、主人武蔵守の近習を勤めていた。この頃の都に威勢をふるっている者どもは、東国といわず西国といわず、すべてが「声は塔の鳩の鳴くようにて」と太平記の作者にあざけりしるされた田舎侍である。師直の一家中もその数には洩れないで、かれらが生い立った武蔵野の芒をそのままという髭面をそらせて、坂東声を遠慮会釈もなしに振り立てるいわゆる「猛者」の巣窟である中に、かの采女ばかりは都びとにも笑われないような優美の風采を具えていた。かの兼好法師に「白うるり」と書き伝えられたなにがしの僧と同じように、清く美しく滑かに輝いた顔の持ち主であった。
姫が人にも洩らさず供をも連れないで、忍びやかに館をぬけ出した行くさきを、彼はおぼろげに推量していたので、ほかの者どもが当途もなしにそこらの神社仏閣などを尋ね迷っている間に、最もおくれて館を出た彼が最も早く姫のゆくえを探し当てた。