Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
かれは由ないことを師直の前で口走ったのを今さら悔んだ。どんな返事をよこそうとも、それは相手の心次第とはいうものの、こうだんだんに深入りして来ると、いよいよ事が面倒になるのをかれは恐れ危ぶんだ。かれは幾たびか恋の使いに立ったが、それはいつも不成功に終って、師直の機嫌を損じているところへ、又もや今度の使いを言い付けられた。断わり切れないでよんどころなく出てゆくと、その返事は「重きが上の小夜衣」であった。かれも実はその古歌の心を覚っているのであるが、師直の前であらわにそれを説きあかすのを憚って、好い加減に取りつくろって逃げて来た。しかもこの問題はこれぎりで消えてしまう筈はない。かれはその真相が暴露すると共に、いよいよ募って来る師直の憤怒を恐れた。
師直の憤怒、それから惹いて当然おこるべき我が身の破滅――侍従はその重い苦労に魂をおびやかされて、ひと摺れのした古女房も思案にあぐみながら、半ば夢心地でうっとりと長い廊下をあゆんで来ると、廊下の中ほどで一人の男に出逢った。
「侍従どの。」と、男は小声で呼びかけた。
呼ばれて立ち停まると、彼は荏原権右衛門であった。