Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
「ここらの川は瀬も早い、底も深い。気の毒じゃが、あの人はもう救われぬ。おあきらめなされ。」と、彼は小坂部に言ったと同じように、采女にも注意をあたえた。
それでも、もしや浮かびあがるかと、小坂部と采女とはしばらく水の上をうかがっていたが、一旦吸い込まれた女の姿はふたたびかれらの眼に映らなかった。むこう河岸では鷄の声がつづいてきこえた。
「夜が明け放れました。早うお越しなされ。」と、眇目の男はうながすように言った。
彼はどこから貰って来たのか、古びた麻袋に入れた粟を掴み出した。ふちの欠けた素焼の土鍋に川の水をすくい込んで、もとの洞穴へもぐり込んだかと思うと、更にそこらから枯枝を拾いあつめて来て、それに燧の火をすり付けて、粟の粥を炊きはじめた。小坂部と采女とはまだ川のほとりを立ち去らなかった。
川の底へ深く沈んでしまったのか、但しは岩と岩との下をくぐって川下の方へ遠く押し流されてしまったのか、侍従はついにその姿をあらわさないので、二人はもう根負けがしてしまった。不幸な女房の運命を悼みながら、かれらはしおしおともとの洞穴へ戻って来ると、枯枝の火は威勢よく燃えあがって、土鍋からは温かそうな白い煙りをふいていた。