Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
」
「折角のお心づくしもみな仇となりました。」と、采女も同じく溜め息をついた。
眇目の男はやはり黙っていた。彼は侍従の死に対しても、今夜のこの怖ろしい出来事に対しても、別に感傷的な詞も顔色もあらわさなかった。彼はあくまでも冷静な態度で、自分のゆくべき道を真っ直ぐに歩んでいるように見えた。三人は村を通りぬけて、人家のない田圃みちや野路を一里あまりも行き過ぎて、暗い森の前に来かかると、森の前には辻堂の立っているのが星明かりで見られた。それを目あてにたどり着いて、男は辻堂の縁に腰をかけると、小坂部も采女も列んで腰をおろした。
「今夜も寒い。」
独りごとを言いながら、男はそこらの枯枝や落葉を拾いあつめた。采女も手伝って焚火した。その火の光りであたりを見廻すと、堂のそばにはかなりに大きい沼があった。古い沼のおもては水明かりのしないほどに黒ずんで、岸には枯芦や芒が茂っていた。
「今夜の糧を求めて来まする。おとなしく待っておいでなされ。」
言い捨てて男は暗い路をどこへか立ち去った。風はないが寒い夜で、そこらの枯草の上には露霜が薄白く光っていた。小坂部と采女とは辻堂の縁を降りて、身を摺り合うようにして焚火の前にひざまずいた。