Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
それから幾年のあいだ、かれは死んだか、あるいは采女と一緒にいず方にか忍んでいるのか、その消息もまったく絶えていたのである。その憎むべき娘の名を、不運のどん底に沈んだ今この際に聞かされて、師直の胸にひそんでいた憤怒の火の手がまた俄かに燃えあがった。
「その小坂部はどこにいる。」と、師泰は訊いた。
「その棲家は申されぬ。」と、男は意味ありげにほほえんだ。「しかし小坂部殿はたしかに無事に生きながらえている。本人直きじきにまいらるる筈じゃが、子細あってその棲家より一と足も外へは出られぬので、われらがその使いをたのまれて参った。」
「むう。」と、師泰は眉をよせた。「して、小坂部がなんと言い越したのじゃ。」
「御運も最早これまでじゃと……。」
師泰はぎょっとして兄の顔を見かえると、師直はその大きい眼をいよいよ苛げた。
「おのれ、まだまだ不幸が仕足らいで、このきわにまでも親叔父を呪おうとするか。」
「はは、何が不孝。」と、男はあざわらった。「いや、不孝ならば先ず不孝として、その不孝者には誰がしたか。よく考えて御覧ぜられい。小坂部どのは正直におのれの恋を打ち明けて、采女と女夫にしてくれとお身に嘆いた。