Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠3
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠3 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 214.131 Zeichen · 423 Bildschirme
その様、何か心得ているらしく見えます。しかし動きはじめた長持は、竜之助のこの声を聞いて静まることがなくて、かえって烈しい音を続けざまに中から立てて、それに相答うるような有様でありましたが、敢て一言も人の言の葉としてはその中から洩れて来るのではありません。
「おとなしうしておれ、騒ぐとかえってためにならぬ」
竜之助は叱るように、また教えるように、或いは嚇すようにこう言いました。ところが、その声を聞くと、いや増しに長持が動きました。動くというよりは寧ろ、長持そのものが荒れ出したように見えました。もしこの長持の中に人があるならば、こんなに荒れ出す先に、許せとか助けよとか、哀れみを請うべきはずであるのに、そうでなくて、ただただ必死に荒れてのみいるのでありました。その荒れる烈しさをこちらから想像すれば、それはかなり力のある男のする業であると、誰もそう思わないわけにはゆきません。
口では叱るように、教えるように、または嚇すように騒ぐなと言ったけれど、その態度は冷然たるもので、いよいよ動き荒れ出した長持の蓋も箱も中から裂けてしまいそうになってきた時も、竜之助は立とうとも動こうともしませんで、やはり冷然として、その刀を鞘に納めてしまいました。