Japanische Klassiker mit Furigana
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こうじょうさいぼう
工場細胞
小林 多喜二
Lesen Sie 工場細胞 (こうじょうさいぼう) von 小林 多喜二 (こばやしたきじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.234 Zeichen · 184 Bildschirme
――お前の妹は起き上がると、落付いて身仕度をした。何時もズロースなんかはいたことがないのに、押入れの奥まったところから、それも二枚取り出してきて、キチンと重ねてはいた。それから財布のなかを調べて懐に入れ、チリ紙とタオルを枕もとに置いた。そういう動作をしているお前の妹の顔は、お前が笑うような形容詞を使うことになるが、紙のように蒼白だった。しかし、それは本当にしっかりした、もの確かな動作だったよ。特高が入ってきて、妹を見ると、「よウ!」と云った。妹は唇のホンの隅だけを動かして、冷い表情をかえしたきりだった。妹と特高のその様子を見た母の顔は急に変った。そして、口のあたりをモグ/\と動かした。が、何故か周章てゝ両手で、自分の口を抑えた。妹はその母をチラッと見ると、横を向いた。――その朝、この年とった母は何んにも云わなかった。たゞ、「寒くないか?」と云ったことゝ、愈々連れて行かれるときに、妹の顔を見て、「あ――あ、お前もか!」と云ったきりだった。
母はこの前の、お前の時のように、今度は泣かなかったよ。だが、母はおそろしく無口になってしまった。誰か何かをしゃべっても、たゞ相手の顔を見るだけで、口をきかないの。