Japanische Klassiker mit Furigana
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こうじょうさいぼう
工場細胞
小林 多喜二
Lesen Sie 工場細胞 (こうじょうさいぼう) von 小林 多喜二 (こばやしたきじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.234 Zeichen · 184 Bildschirme
上田の進ちゃんのお母アは、とう/\気が狂ったとみんなが云った。お前がこっちにいた時知っているだろう、「役所バカ」と云って、五十恰好の女が何時でも決まった時間に、市役所とか、税務署とか、裁判所とか、銀行とか、そんな建物だけを廻って歩いて、「わが夫様は米穀何百俵を詐欺横領しましたという――」きまった始まりで、御詠歌のように云って歩く「バカ」のいたのを。ところが上田のお母アは、午後の三時になると、きまって特高室に出掛けて行って、キャンキャンした大声でケイサツを馬鹿呼ばりし、自分の息子を賞め、こんなことになったのは他人にだまされたんだと云い、息子をとられて、これからどう暮して行くんだ――それだけの事を文句も順序も同じに繰りかえして、進は腕のいゝ旋盤工で、これからどの位出世をするのか分らない大事な一人息子だからと云って、大きな蒲団を運んできたり、暖かい煮物の丼を大事そうに両手にかゝえて持ってきたり、それを特高が拒ばもうがどうが、がなり立てゝ、無理矢理置いて行く。そして次の日には又マントを持ってきたり、手袋を持ってきたりする。特高室は上田のお母アの持ってくるもので一杯になってしまった。