Japanische Klassiker mit Furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme
敬太郎はまた振り返って女の顔が見たくなった。男の顔もついでに見ておきたかった。けれども女と一直線になって、背中合せに坐っている自分の位置を考えると、この際そんな盲動は慎しまなければならないので、眼のやりどころに困るという風で、ただ正面をぽかんと見廻した。すると勝手の上り口の方から、給仕が白い皿を二つ持って入って来て、それを古いのと引き更えに、二人の前へ置いて行った。
「小鳥だよ。食べないか」と男が云った。
「妾もうたくさん」
女は焼いた小鳥に手を触れない様子であった。その代り暇のできた口を男よりは余計動かした。二人の問答から察すると、女の男にくれと逼ったのは珊瑚樹の珠か何からしい。男はこういう事に精通しているという口調で、いろいろな説明を女に与えていた。が、それは敬太郎には興味もなければ、解りもしない好事家の嬉しがる知識に過ぎなかった。練物で作ったのへ指先の紋を押しつけたりして、時々旨くごまかした贋物があるが、それは手障りがどこかざらざらするから、本当の古渡りとは直区別できるなどと叮嚀に女に教えていた。敬太郎は前後を綜合わして、何でもよほど貴とい、また大変珍らしい、今時そう容易くは手に入らない時代のついた珠を、女が男から貰う約束をしたという事が解った。