Japanische Klassiker mit Furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme
瞳孔も肛門も開いてしまっていますから。どうも御気の毒です」
医者はこう云ったがまた一筒の注射を心臓部に試みた。固よりそれは何の手段にもならなかった。松本は透き徹るような娘の肌に針の突き刺される時、自から眉間を険しくした。千代子は涙をぽろぽろ膝の上に落した。
「病因は何でしょう」
「どうも不思議です。ただ不思議というよりほかに云いようがないようです。どう考えても……」と医者は首を傾むけた。「辛子湯でも使わして見たらどうですか」と松本は素人料簡で聞いた。「好いでしょう」と医者はすぐ答えたが、その顔には毫も奨励の色が出なかった。
やがて熱い湯を盥へ汲んで、湯気の濛々と立つ真中へ辛子を一袋空けた。母と千代子は黙って宵子の着物を取り除けた。医者は熱湯の中へ手を入れて、「もう少し注水ましょう。余り熱いと火傷でもなさるといけませんから」と注意した。
医者の手に抱き取られた宵子は、湯の中に五六分浸けられていた。三人は息を殺して柔らかい皮膚の色を見つめていた。「もう好いでしょう。余まり長くなると……」と云いながら、医者は宵子を盥から出した。母はすぐ受取ってタオルで鄭寧に拭いて元の着物を着せてやったが、ぐたぐたになった宵子の様子に、ちっとも前と変りがないので、「少しの間このまま寝かしておいてやりましょう」