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Japanische Klassiker mit Furigana

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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

Lesen Sie 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 346.393 Zeichen · 692 Bildschirme

Aozora Bunko

夜になると、母親はまた腹をすかして、お庄に近所で鮨を誂えさせ、そっと茶盆を持ち込ませなどして、少しの間も食ったり飲んだり、お饒舌をしていなければ気が済まなかった。

「私の病気がよくなったら、阿母さんもゆっくり東京見物でもして下さいよ。」病人は寝台のうえから話しかけた。

「私もこんなことでもなければ、めったに出て来るようなこともないでね。」母親は、銀の延べ煙管に莨をつめて、マッチで内輪に煙草を吸っていた。

このごろ田舎で見た、東京役者の芝居の話などが始まった。東京で聞えた役者のことをこの母親もなにかとなく知っていて、独りで調子に乗って弁った。

母親が出て行くと、病室はにわかに淋しくなった。暑い日中、熱に浮かされたような患者は、時々床の敷物のうえに疲れて居睡りをしているお庄を、幾度となく呼んだ。お庄があわてて枕頭へ顔を持って行くと、叔母は鈍いうっとりした目を開いて、一両日姿を見せない叔父のことを気にかけて訊いた。

「叔父さんに急いで来てもらうように、電話でそう言ってね……。」と、患者は囈言のように呟いた。

患者も附添いも倦んだように黙って、離れていた。埃深い窓帷には、二時ごろの暑い日がさして来た。