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Japanische Klassiker mit Furigana

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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

Lesen Sie 日本怪談大全 第一巻 女怪の館 (がまのち) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.678 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

「おかしいな」

私は思いだして、その櫛を卓の上に置き、飲みさしのビールのコップを持った。私は彼の女に逢うと云うことよりは、入ってない女を見たと云う、その不思議の方へ心が往った。私は発狂前の者が錯覚を起して、種々の物を見ることを知ってもいたし、聞きもしているので、これは、発狂の前兆ではないかと思って、じっと気をおちつけて、その日のことを考えてみた。

朝、家を出しなに、何時も煙草を買う煙草屋で、九銭の朝日を買って、それで一銭のお剰を貰ったこと、込みあった電車へ乗って、前に立った女学生と足を松葉つなぎにしていて、己で顔を赧らめたこと、事務を執ったこと、机を並べている同僚が例によって支配人の口真似をしたこと、傍にいる友人の電話があってから、数寄屋橋外の鳥屋へ往ったこと、友人と話合った仲間の噂のこと、それからここへやって来て、女の櫛を拾ったこと、それは皆順序だって、すこしも躊躇することなしに思いだされた。

「おい何をそんなに考えてるのだ」

友人が大きな声をしたので、私はびっくりして友人の顔を見た。友人は笑っていた。

「おい、そんな変な櫛は棄てろよ、そんな櫛を持ってるから、変な気になるのだ、棄てろ、棄てろ」