Japanische Klassiker mit Furigana
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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本怪談大全 第一巻 女怪の館 (がまのち) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.678 Zeichen · 394 Bildschirme
有明の行燈の傍に寝床を並べて二人の女が眠っていた。乳母の方は歯を鳴らしていた。
太郎左衛門は右側へ寝ている壮い女の傍へ寄って往った。壮い女は左枕に隻手を持ち添えて惚々するような顔をして眠っていた。太郎左衛門は呼吸を殺してその寝顔を見ていたが、やがて、隻手を出して女の右の肩端にかけ、静に揺り起そうとしたところで、その手が不意にしびれて動かなくなった。驚いて声を立てようとしたが、舌がこわばって口が利けない。と、女はぱっちりと眼を見開いて莞と笑った。
太郎左衛門は夢を見ているような気になっていた。そして、ふと気が注いて見ると、己は己の寝床の上に坐っていた。
「夢であったか、夢にしては」
と、太郎左衛門は考えて見た。夢にしてはあまりに事実が明瞭している。
「では、どうしてここへ戻って来た」
それはすこしも記憶がなかった。
「それでは夢であったのか、しかし、どうも夢でない、夢でないとすると……」
夢でないとすれば……奇怪千万である。行燈を消して室を出たこと、ひやひやする縁側を歩いたこと、女の室の障子をそっと開けたこと、乳母に気を配りながら足を爪立てて忍び寄ったこと、手のしびれ、舌のこわばり、女の笑い、皆生々した感触のあることばかりではないか。