Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme

Aozora Bunko

駕を一挺、大急ぎで仕立てい」

「へ、へい。どなた様がお召しになるので」

「この男を――」

と、鞍つぼにだらりと両手をぶら下げているのを眼で示すと、駕屋は、ちょっと怪訝って、

「どちらまでやりますか」

「東海道まで」

「東海道とおっしゃっても、京都から江戸までございますが」

「どこでもいい。しかしなるべく遠方へ持って行って打っ捨ってくれい」

「じゃ、それは、死んでるお人ですかえ」

「ま……死んでるようなものだ。しかし、粗略にいたすと承知せんぞ。賃銀も十分に払う。それ抱いて、駕へ下ろせ」

「重い人だな」

二人がかりで、駕の中へ抱き入れる。体温はあるので駕屋はすこし安心したていであった。長藩の若い将校は、懇々と、なおも何か厳命して、金子三両を駕屋に預けた。そしてすぐ馬首を回らすと、闇の道へ、急いで引っ返して行った。

三

醍醐を越え、山科へ出て、駕屋は夜をとおして駈けた。夜が明けてから安宿で四時間ほど眠る。駕の中の客はうつつである。飯時に、粥を与えたが食わない。

「三両分だけ走るのは、大変だなあ相棒」

「美濃あたりまで送れやあいいだろう」

変な客を乗せたものだと思う。しかし頼み人が官軍の将校なので彼らも不正直には扱いかねる。