Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
また、鎌倉塗りの盆の上には、薬湯をせんじた薬土瓶と湯呑みが伏せてあって、そばには一鉢の福寿草。花嫁の丸髷に綿ぼこりがついているくらいな、目に触らない埃がすこしたかッて見えます。
その福寿草も開き切ってしまいそうな暖かい初春の陽が、櫺子の窓いッぱいにさしこんで、蒲団の上に日かげの縞目を描いていますが、その陽光と了戒の刀に枕元を守られている当の人は、春眠暁を知らずという甘睡の度を超えて、こんこんとしたまま、いつまで醒めよう気色も見えません。
眠れる人は、相良金吾でありました。
金吾といえば、彼は尾張中将の放縦なる若殿徳川万太郎の側付き、その万太郎が市ヶ谷の上屋敷を放逐された後は、当然一緒に根岸の別荘に移って、主人と共に起居しているべきでありますが、ここは忍川の水門尻、上野のお成街道を横切ってくる小川に添った片側町の露地で、野暮にいえば下谷の源助店、丹頂のお粂がひとり暮らしの住居であります。
「おや……」
切壁の小襖をあけて、そこを覗きながらこう言ったのはお粂です。
「……まだ眼がさめない」
枕元にやんわりと坐ると、長火鉢で加減をみてきた粥の鍋と鯛の刺身をのせてきた盆を、一まず横の方へ置いて、