Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
――がしかし、南隅の寒紅梅一枝、月温く霞む夜を待つもののように、やはり何処か下萌の季節らしく、寒いうちにも春意を含んでふくらんでおります。
「お嬢様、こんどはあなたの番じゃございませんか」
「あら、そうかえ」
「考え事ばかりしていては、折角こうしてお慰みのお相手をしていても、何にもなりは致しません」
「だって、何をしても、気が紛れないのだからしかたがないよ。私も、お祖父様のことは、忘れよう、忘れようと、心では努めているのだけれど……」
玉の如き佳人の涙が、双六盤にこぼれました。
「おりんや、もう止しましょう」
「そうですか……」と、小間使いのおりんも、慰めることばに困りながら、双六盤を床脇へ片寄せて、
「では、お気が晴れますように、おりんが田舎娘の手前を一服たててさし上げましょうか」
襖を開けて、隣の茶室の炉べりに坐りました。
ところへ、裏門の潜り戸を音させて、ガサガサと落葉を踏んではいって来た高麗村の次郎が、
「おりんさん、月江様は?」
「おや次郎かえ、よい所へ帰って来てくれました、お前が居ないので、お嬢様も淋しがっていたところですよ」
「今夜、釘勘のおじさんが来ると言ってたね」