Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「やッ」
声と共に、飛んで来た小柄――キラッと白い光を引いて、彼の耳をあやうくも掠めました。
「たしかに、吉宗とは別人。きゃつこそ曲者!」
金吾も追う。万太郎も飛ぶ、
いつかの夜とは違って、月明の晩、それに身を隠す樹林も少ない嵐山の裏です。
かなたこなたと追い廻された優形の男は、かなり狼狽した様子で、やがて、息をせきながら、裏山の一端まで逃げ込んで来ると、厚ぼったい熊笹の茂みから身を跳らして、古びた祠の扉を押して飛びこみました。
「もう袋の鼠だ。あの堂の中へ逃げ込んだのが運の尽き」
「のがれぬところと、観念したものと見えまする」
喜連格子の外へ寄って、堂の破れびさしを仰ぐと、北辰石神という額があります。江城鎮護の石神として、太田持資が築城以前からあったのをそのまま江戸城の最も奥まった所に祠ってあるというのは、こんなお粗末なものかと万太郎には思われました。
それと、ふと頭を掠めたのは、石神という額の文字です。
目白の丘の石神堂、高麗村の月江の屋敷の庭にある石神堂、そのほか、武蔵野のおちこちに限りなくあるという石神堂が、この江戸城の奥にもある? ……
この江戸城も、遠い昔は、やはり武蔵野の一部であったことを思えば、なんのふしぎもありませんが、彼には、ふしぎな奇遇のように感じられてならない。