Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
腹を立てる値打ちもなくなって、お粂は友禅の座ぶとんへ膝を居くずしに坐りながら、
「用のありそうな顔つきをして来て、やっぱり目的は一口飲みたいんだろう」
「仰っしゃる通りでもあり、そうでもない用件も少し帯びて参ったので。まあ春のこと、一杯やりながら悠々とそのお話をいたしたいと思ってな……」
と燗に指を触れて見て、
「あちッ、ち、ち、ち、ち……」
仰山に湯気の立つのを持ち代えながら、
「ひとつ、姐御もどうですな」
「有難くないね、お前さんのお酌じゃあ」
「いくら奥に色の小白いのを寝せつけてあるからッて、そんな憎まれ口をたたくものじゃありませんぜ、馬春堂だって、一年三百六十五日広小路へ売卜の野天を張っているうちにゃ、これでも、易はあたらなくってもいいから相談相手になってほしいといってくる御婦人方も少なからぬ男でしてな」
「ああ、そうかよ、うるさいね」
「人の顔を見るや否や、すぐに虫酢の走りそうな筋を立てるのは、けだし丹頂のお粂さんひとりと言っても過言ではない」
「どういう訳だが、自分で卦を立てて見たらいいだろうにさ」
「その判断なら筮竹はいらない。梅花堂流の心易で、ちょッとこう胸に算木を置いてみるならば……ウムと……山天大畜の二爻変、浅き水に舟をやるの象――君子徳を養うの意というところだ。