Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
――お粂。あの丹頂のお粂。
彼は途すがら、その女の身の上にも、さまざまな黙想をめぐらせている。
奉行所へ送り込めば、死罪をまぬかれない凶状のあるお粂を、目明しの自分が、ひそかに家に隠しているのは、まったく相良金吾の頼みをうけてしたことです。
金吾は、お粂には怨みもあるが、また再生の恩義もある。ことに、あの螢の飛び交う甲州の夏の夜自分に責められて、みずから毒を顔に浴びて自殺しようとした彼女であってみれば、悔悟の状は充分に見えています。怨むところはありません。
で、甲州から差立てられる時、金吾がひそかに、その助命の工夫を、釘勘に頼んでおいたものとみえます。しかし、いつまで現在のままでも置けますまい。
この処分は、彼の胸の宿題でした。
やっとそこらの額風呂の戸があいて、紅殻いろや浅黄のれんの下に、二、三足の女下駄が行儀よくそろえられ、盛塩のしたぬれ石に、和らかい春の陽が射しかける午少し前の刻限になると、丁字風呂の裏門から、すっと中に消え込む十八、九の色子がある。
曙染の小袖に、細身の大小をさし、髪は髻に結い、前髪にはむらさきの布をかけ、更にその上へ青い藺笠を被って顔をつつみ、丁字屋の湯女たちにも羞恥ましそうに、奥の離れ座敷へ燕のように身を隠します。