Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

「どんなことを?」

「――私は日本左衛門が忘れられない……と」

「ああ、私は、そう言っていた」

「あの男が恋しいと仰っしゃいました。あの男の妻になりたいとも言ったことがございます」

「アア、私は、そう言ったよ」

「では伺いますが、あなた様は、今でもそのお心でございますか?」

お蝶は黙りこみました。しばらく返辞が洩れません。

臆面なく、彼女が口にまで出していた恋が、嘘か真か、という点は、今以てヨハンの気がかりであるとみえます。

答えに窮したものか、お蝶は暫く黙しておりましたが、

「……分らないわ、今の私には」

そして、ヨハンがまだ何か問い詰めようとする先に、暗の帳をふわりとあげて、ほの白い顔の端をのぞかせたかと思いますと、

「私のすることを見ていておくれ、永い目でとは言わないのよ、ここ二晩か三晩のうちだから」

ヨハンは暝目しながら十字を切って、彼女の足元へ祈祷を投げました。

「お姫様! あなたをお信じ申します」

――が、その途端に、彼女の白い腕はハラリと帳を落として、「ヨハンや、後を閉めておくれ」

鉄柵の一端に隙を作ると、猫のように身をすぼめて、音もなく外へ抜け出しました。