Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
ろくに体を洗いもしないで、それから伊兵衛と馬春堂が、上がり湯をザッと浴びて着物を引っかけ初めたころ。
――もう八間に灯が入って帳場格子に宵のきた筑波屋の表梯子。
そこへ、化粧道具を手拭にくるみ、少し身丈にあまる丹前は伊達巻のあだッぽい姿を見せたのは丹頂のお粂で、
「あの、番頭さん」
二、三だん、梯子を踏みかけながら、上げ鬢の止めを、ちよッと指でおさえて、
「――早くして下さいよ、急ぐんだから」
「ヘイ、只今」
勘定書であろう、帳場の番頭、パチパチパチパチ算盤の珠音を弾きながら、
「お風呂はもうお済みでしたか」
「ほかの客がいたから止めてきましたよ」
「あれ、空いていたはずでございますのに」
「いいよ、もう」
「あいにくと今夜は、護国寺のなんで、ばかに混み合いますもんですから、どうも不調法ばかり仕りまして」
「それから、駕を二挺」
「かしこまりました」
「私は、足ののろい駕屋さんは嫌いだからね」
「達者なのをそう申しておきます」
「じゃあ、すぐにだよ」
「お夕食は?」
「いらない」
トントンと白い踵を二階へ運んで、お粂の姿は裏二階の廊下の奥に吸いこまれる。
女中の手が足りないかその部屋には、まだ行燈が来ていません。