Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
浅草界隈に、見かけない娘――今までたしか三度もこの前を行き戻りしたが? ……と思うそばから新助のニヤリとしたのは、この男にありそうな銀流しのうぬぼれ。
たばこ屋に笑くぼのある娘をおくように、小間物屋にこの態の男を坐らせておく商法の機微は、今も昔も変りないものとみえました。しかし、気になるのは新助の目で、うす暗い中にジッといる猫目という感じ――ことにあらぬ所を見て何か考えている時は、どうも女たらしの手代にしては、分に過ぎたる険しさのあるのが気になる。
「また帰ってくるにちがいない」
こんな予感をもったらしく、新助はわざと往来を気にして往来を見ずにいると、やがて案のじょう、のれんの下に影がさして、
「あの……」
と、お客様です。
「いらっしゃいまし」
「おたくに、油はありますか」
「油? ……へい、びんつけで」
「いいえ、伽羅か、でなければ松金油でも……」
「おあいにくさまでございました」
「そう」
客は軽く立ち去って、別のものを見ようともしない。けれど、それは新助が心まちをみたしに来たさっきの紫頭巾の娘ではなく、お珍しくない近所の引ッかけ帯のおかみさん。
あきらめました。