Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「あッ、般若の仮面!」
馬春堂は驚かないが、驚いたのは三人の武士、その凄気にうたれて、思わず一歩足を引きながら、
「なんだこの箱は?」
「仮面箱だろう」
「ウーム、この般若はまたおそろしくよく出来ている!」
よく出来ているはずです。一代の仮面工出目洞白の逸作、尾張中将の秘蔵から世に迷い出た拝領仮面です。
馬春堂は穴から救い出される時にふと気がついて、この品を、ついでに持って上がったのですが、こんな事になるならば、むしろあのまま銭瓶の穴の底に、置き残してきた方がよかったものを――と後悔しました。
「おい、貸してくれ」
と、馬上の侍は手を出して、
「――それを」
「般若か」
「般若も、その仮面箱も」
「手綱と荷物がある上に邪魔ではないか」
「じゃ、箱の方だけ、貴公たちに、持って行ってもらおうか」
「仮面は」
「顔へつけて参る」
「酔狂な!」
「いや、夜だ! 覆面がわりに」
「なるほど、それも春興か」
取って渡すと馬上の侍は、仮面をピタリと顔へかぶって、
「尾いてくるか」
と、手綱を進めかけながら、うしろを見る。
「うむ、追って行くが、あまり飛ばすなよ」
「心得た」
駒は石神堂をあとにして椎名方面へ一散に走り出してゆく。