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Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

ですが、父二官の妙に空虚に光る眼は、もういつもの慈父ではありません。

「えい、この体にとッつくなッ、貴様がさわると、わしはよけいに気が狂いそうだ」

突き飛ばそうとしましたが、お蝶は髪切虫のように父の袖へしがみついて、

「静かにいッて下さい。わけをおッしゃって下さいッ……よ、よ、よッ、お父さーん」

「なに、わけをいえ?」

「ええ、わけを聞かして下さい、たった親ひとり子ひとりの私達なのに、この間から、口もきかないで怒ッていらッしゃるのは、一体どういう訳なのか、わたしは、情けなくッてたまりません」

父の足元へ、ワッと泣いて身をくずしましたが、その悲しげな泣き声も、今日の二官にはかえって腹立たしく、いつもお蝶の涙には、白も黒もなく盲愛にくるまれて口のきけないかれの手が、

「ええ、よくそんな空々しい口がきけたものじゃ、お蝶ッ、お前というやつは……お前という怖ろしい女はッ……」

癇のふるえを歯の根に鳴らして、赤い縮緬の襟裏をつかむや否、ズルズルッと座敷じゅうを引きずり廻して、それでもなお堪忍のなりきらぬように、拳をあげて丁々とお蝶の肩を打ちすえました。

その力に他人と父の愛憎のちがいはありましょうとも、なかば狂気した二官の骨ばッた握り拳で打たれては、定めしお蝶の身にはこたえたでしょう。