Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「ヨハンが? ……」お蝶はぶるぶるッと目に恨みをこめて、
「あの人が、そんなことをお父さんに告げ口したのですか」
「天を怖れろ、おそろしいのは神のおさばき、おまえのその生首が、龍平と同じ獄門台に乗らないうち、自分の手てさばきをしてやるのが、わしがお前に送る一番最後の愛だ」
「いやです、私は死にません」
「刑吏の錆刀よりは、慈愛の刃をうけてわしと一緒に死んでくれ」
「あっ、いやですッ」
「こッ、こうまでいって聞かしても」
「死ぬのは嫌です! お父さんッ、――あれッ、あれッあぶない!」
絹をさくようなお蝶の声。
それまで、耳をすましていた縁の下の伊兵衛も、ふたたび頭の上にひびく物音に、どうなる事かと思っていると――その襟元へ、タラタラと生ぬるい液体がこぼれて来たので、
「あッ」
と、仰向いて見ると、床板の隙間に、まざまざと滲み出してきたのはまぎれもない血汐の雫……
「ちぇッ、ばかな真似をしやがッて、とうとうお蝶を」
首すじに垂れた血潮をなで廻して、伊兵衛もそこでうろうろと、
「折角、夜光の短刀の秘密を、親子の口から索ろうと思っていたのに、心中されちゃア玉なしだ」
じッとしてはいられなくなって、四ツん這いになった道中師の伊兵衛、そこを飛び出そうとして暗がりをはい出すと、土台柱一本へだてて、意外やそこにも二ツの目玉。