Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
いつか、自分の身は浮いています。駕の簾戸から外を見れば、うららかな武蔵野の風物がゆるく、後へ後へと流れてゆく、
と――その足取りもだんだんに早くなる。
駕が早くなるにつれて、ギッギときしむ音、タッタとそろう郷士たちの足音、一つの調子をもって来て、万太郎の体は浪に揺らるる小舟の中にあるような感じ。
それも、行く程に駆ける程に、益、加速度となって、息をつくまもありませんから、万太郎はわが身の動揺よりも郷士の労苦を気の毒に思っている。
森を見ました、八幡の鳥居を見ました、菜種の花の路傍に小さい地蔵堂を見ました。朝鮮塚という石碑の文字、杉の並木、一望の草の波、窪地、また岡――というふうに、奇趣なき平野の点景も様々に目まぐるしく流れ去りましたが、絶えて橋というものを越えません。武蔵野に少ないものは橋でした。
もう、この駕は、何里を駆けたでしょう。
いつか夕霞の薄い膜が、すべての物にかかっている。
あれから二刻。
としても、四、五里は一息に来たにちがいない。
途中、駕側の郷士が、肩を代えることは度々でしたが、休むということもなく、足取りのゆるくなることもありませんから、何を問う機会もない。