Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「まあ、次郎。おまえは一体どうしたの?」
「お嬢様、……すみません」
「男のくせに……可笑な人……おまえ泣いてるネ、泣いてるネ」
「いいえ、煙いんです、風呂の煙が」
「じゃ、顔をお見せ。……私、どんなに心配していたか分りませんよ、あの騒ぎの晩きりお前は帰って来ないんだもの。……お前が帰らないので、たれよりも一番心配していた者は、この私だということを次郎は知っておいでかえ?」
「え。それはよく、分っています。だから私も毎日この鍛冶小屋で、お嬢さんの事ばかり考えつづけておりました」
「じゃあ、なぜ高麗村へ帰って来ないの」
「…………」
「おまえは、もう奉公がいやになったのかえ? 私のそばに居るのがいやにおなりなのだろう」
「お嬢さん。次郎はお屋敷へ帰れないことをしてしまったんです。あの、石神堂に納めてあった仮面を失くしてしまいました」
「ああ、それで」
「御隠家様の前に合せる顔がないんです」
「いいよ、いいよ。月江がお詫びをして上げるから」
「でも……」
「いいから私と一緒にお帰り」
「行かれません。次郎はどうしても、あの仮面を持たずにお屋敷へは帰れません」
「まあ、強情な次郎だこと」