Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

「ああ……冷めたい……」

岩根の流れをすくって、お蝶は初めて山の肌と同じ寒さをおぼえたように、ぶるッと、身をふるわしたようでした。

でも、まだ後ろを振顧れば、八王子、小仏村、小原、駒木根あたりの灯は近く見えて、越えようとするこれから先の山容は、岸々とした難所切所を目の前に見せている。

「とても、今夜のうちには越えられそうもない」

お蝶も今はそう思うのでした。

また、そうしてまで、道を急がなければならない理由も彼女にはありません。

では、何で、ふつうの旅人も大事をとる山越えに、夜を選んで来たかというと、それはむしろお蝶には安心な方法で、彼女の旅は、昼よりも夜こそ易々とできるからです。

人は夜を怖れますが、お蝶は昼が怖ろしい。立場に着けば必ず役人の眼が光っているし、山にかかれば妙な男が話しかける。駕をすすめる駕かき、馬を強いる馬方、それらの道中人足の荒ッぽいことばも、みな自分がころびばてれんの娘と知って脅迫するように思われ、ただ振顧る往来の人の目も、自分を混血児と知って指さすように気がちぢまる。

それよりも、むしろ夜の旅こそ、お蝶にとっては気楽でした。