Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「やれやれそいつは大変だ、どんな急用があるのか知らないが、夜が明けてからにしたらどうだい」
折も折なので、しきりと止める者もありましたが、若い行人は身支度をして、教えられた間道から小原へ越えると言って、まもなく、ただ一人で下頭小屋の人々と別れて行きました。
よせばいいのに。
さだめし後では下頭小屋でそう言っていましょう。一歩、沢尻の細道を踏み出すと、両手で目をふさがれて行くような暗。
しかし、やがてだらだらと上へ辿ると、空を、覆うていた叢林もとぎれ、沢辺の水明りも足元を助けて、そこに一つの道しるべの石が見出されます。
それから沢を向うに渡って、狭い道を流れに沿って行けば、小仏の裏道、例の千魂塚の前を通らずに、甘酒茶屋の先に出る――と下頭小屋で聞いて来たはずなのに、その男は、敢て、右手の登りへかかりました。
小仏越えの本道、星影のつづら折りを辿る程に、まもなく前の千魂塚の堂の前へ出る。
彼はそこに立って、あたりの暗を見廻しました。
颯々たる松の声、雨のごとき雫の音、依然として一刻前と少しも変りがありませんが、そこに千魂塚の白麻の布をかぶッていたお蝶の姿は見出せません。